「こうして鳴ける日をずっと待っていた」セミとの対話

50代男性

 車でよく移動する仕事をしています。
 ある夏の日、少し空き時間ができたので、車を日陰に止めて休憩することにしました。

 節約のためクーラーはできるだけ使わないようにしていますので、
 いつも車内は平均40°と、弱いサウナ風呂状態です。

 なので日陰は本当にありがたいのですが そこにはたくさんのセミがいて大きな声で鳴いていました。
 私は目をつぶってその鳴き声を聞きながら、心を空にして一体感を味わってみようと思いました。
 それからセミにこんなことを聞いてみました。

 「毎日こんなに暑いのに、鳴いていて疲れないのですか?」

 するとセミから、

 「暑いことはとてもいいことなんだよ! こうして鳴ける日をずっと待ってきたんだから、
  嬉しくて鳴いているんだよ…。この嬉しさわかる?」

 とセミが言うので、私はそうだったんですか! 嬉しくて鳴いていたんですか?
 と反応すると、セミからは
 
 「そうだよ、そうなんだよ。だから暑くてもそれがいいんだよ!
  私たちは今この時を精一杯生きてるんだよ。
  あなたはどうなの? 精一杯生きているの?」

 と聞かれました。私もあなたたちのように生きられるかな? そう聞くと力強い声で、

 「生きられるさ、絶対に! あなたは私たちにとって神様のような存在だからね!」

 私はまた聞き返してみました。神様のような存在と言われても、
 ちょっと嫌なことがあると落ち込んだり、すぐに人や自分を責めたりしてしまうから、
 自分のことそんなに素晴らしいって思えなくなってしまうんだけど…?

 「大丈夫だよ、私だって精一杯生きているんだから。
  ほら、私たちの大きな声が聞こえているでしょう。
  あなたが自分のことを何と思っていたとしても、あなたは素晴らしい人だよ。
  落ち込んだり人を責めたりすることがあっても、あなたは素晴らしいってこと」
  
 それで私はどうすれば 素晴らしいと思えるのか聞いてみました。

 「良くても悪くても、できてもできなくても、あなたは生きているでしょう。
  私たちと同じように生きているじゃない!」

 そうセミに言われて、自分が生きていることを自覚していなかったことに気づきました。
 生きていることがあまりにも当然なことのように思っていたのです。
 心が軽くなって、 癒されている自分を感じることができました。

 セミさんありがとうと声をかけると、「もう行っちゃうの?」と返ってきました。
 少し心残りはありましたが、仕事中だったのでその場を去りました。
 しばらく神様の貴い愛に包まれて、自然と感謝の思いが溢れてきました。

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